いけちゃんの悪戯

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ブータン人に学ぶ幸福のすヽめ

みなさん、いま幸せですか。

これだけ切り取るとなんかヤバイ宗教の勧誘のような感じが満載であるが、果たして自分の人生は幸せなのだろうか。もしくは、幸せという感覚についてどれだけアンテナを張って暮らしているのだろうか。

今回は、私の大好きな辺境探検家・ノンフィクション作家の高野秀行さんの『未来国家ブータン』の感想文です。

 

未来国家ブータン (集英社文庫)

未来国家ブータン (集英社文庫)

 

 

そもそもブータンってどんな国?

《ブータン》という国の名前を耳にすると、多くの人が「なんかアジアの小国の一つらしい」とか「世界でもっとも幸せな国」ということをイメージするのではないだろうか。

まず基本的なことから確認するとブータンは、

■「ブータン王国」

■総面積 約38,394㎢

■人口 約70万人

■国語 ゾンカ語

■政体 立憲君主制

らしい。規模感としては九州を一回り大きくしたくらいだが、人口は筆者の出身地東京八王子と同じくらいとのこと。

そんなアジアの小国ブータンに筆者は何をしに行ったのかというと、雪男(世界一般的にはイエティと呼ばれる)を探しに。だが、調査の過程で分かった現地の伝統文化や思想のルポも満載で、これまでの高野本同様に読んでいてめちゃくちゃ面白い。

ちなみにブータンへ観光旅行に行くには、原則的に旅行会社を通してのガイド付きのモノを利用するしか方法がないという。

こちらお金を払えば、あとは旅行会社が全ての段取りを済ませてくれるのだが近年一般的になった格安航空券をゲットしてとかいうことはできないのが現状である。

それだけで、このブータンという小国が少し変わった国だということがわかる。

このブータン紀行のなかで筆者は、数々の強烈なブータン文化を身をもって体験していく訳だが、詳しくは本書を読んでもらいたい。

世界でいちばん「幸福」な国?

今の世界は、GNP(国民総生産)という概念を指標に国家の発展を測っているが、一方ブータンはGNH(Gross National Happiness=国民総幸福量)という概念・指標を採用している。

GNHについてはご存知の方も多いだろうが、この概念そのものがブータンの特異性を物語っていると言っても過言ではないだろう。このGNHという概念、1972年にブータンの国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクが提唱して以来ブータン王国の国策になっている。

本のなかで高野さんがブータン人に「あなたは幸せですか?」という問いを投げかけるが、概ねほとんどのブータン人が「自分は幸せだ」と答えたという。

一体、なぜこのようなことが起こりうるのだろうか。

高野氏は、GNHの概念とチベット仏教(ブータンはチベット仏教を信仰する人が多い)の相性の良さについて言及もしているが、チベット仏教を信仰する人々が相対的に幸せなのかというと絶対的にYESとは言えないはずである。

迷いを救うシステム

「幸福の国ブータン」の実態にはカラクリがある。

ブータンは外国の侵入や異文化の流入に対し極めて敏感であり、自国の伝統を守り続けている。そうするとどうなるか。必然的に物事を決断するポイントが先祖の教えであったり、社会の慣習に依ることが多くなるのだ。

AかBかCかの選択肢が3つあったとして、先進諸国に暮らす人ならば選択に迷うところを、「昔からこうだったから」もしくは「(国の認める)医者がそう薦めるから」という思考回路からノーチョイスで決断を下す。そこに迷いはない。

加えて、選択するブータン人は「自分で選んだ」という感覚から、あたかも自らの自由意志に従って決断したと感じるようだ。

なんて巧妙で、不自由な実態であろうか。

高野氏はこう言う。

教育水準が上がり経済的に余裕が出てくると、人生の選択肢が増え、葛藤がはじまるらしい。自分の決断に迷い、悩み、悔いる。不幸はそこに生まれる。

でもブータンのインテリにはそんな葛藤はない。庶民と同じようにインテリも迷いなく生きるシステムがこの国にはできあがっている。

ブータン人は上から下まで自由に悩まないようにできている。

それこそがブータンが「世界でいちばん幸せな国」である真の理由ではないだろうか。 

 「自由」でないから「幸福」であるというなんとも奇妙なパラドックスがブータンには存在している。

まとめ:現代人はブータン人になれるのか?

この問いに対する答えはおそらくNOである。なぜなら、ブータン人にとっての「幸福」を享受するにあたり我々は自由になり過ぎてしまったからである。

学校で多くのことを学び、ネットで数多くの情報を得られることがわかってしまった以上、現代人はもう元の「不自由」な状態には戻れないのだ。我々はもうパンドラの箱を開けてしまったのである。もうスマホやネットのない世界には後戻りできない。

ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』でもあったように、農耕文明に手を出した人類だが、「狩リや採集生活を続けていた方が実は幸せだったかも?」的な話になってくる。

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※ユヴァル・ノア・ハラリ(2016)『サピエンス全史』河出書房新社

考古学的な幸福観を味わいたい方は、ぜひブータンまで行って確かめてみてほしい(自分もいつか行ってみたい)。