いけちゃんの悪戯

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村上春樹『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』を読んだら、無性にアイラ島へ行きたくなった話

英語で「pilgrimage(ピルグリメイジ)」という言葉がある。日本語にすると「巡礼の旅、聖地巡礼」という意味になる。巡礼者はもちろん「pilgrimager(ピルグリメイジャー)である。この「pilgrimage」という語感だが、なかなかどうして、魅力的な響きを持っていると感じるのは僕だけだろうか。

旅や旅行の目的はさまざまあるだろうけど、自分の好きなもの、興味あるものにテーマを絞って聖地巡礼に旅立つことも、なかなか胸おどる営みである。

 

 

話変わって、僕は村上春樹の本をそこそこ読みます。と言っても有名どころで読んでない作品はけっこうあって(『1Q84』とか『騎士団長殺し』とか。)、むしろ村上春樹が翻訳したレイモンド・カーヴァーとかスコット・フィッツジェラルドとかの方がたくさん読んでるかもしれない。ちなみに村上作品のなかで好きなのは『羊をめぐる冒険』とか『国境の南、太陽の西』、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』あたりですかね。暗〜くジメジメした雰囲気のなかに一条の光を差し込むような終わり方をする部分がけっこう好きなポイントです。

 

 

一方、最近読み進めているのが村上春樹の紀行文・エッセイ集。これが底抜けに面白いのです。最初に読んだのは『ラオスにいったい何があるというんですか』という、村上氏自身がボストンやアイスランド、かつて暮らしていたギリシャの島々を訪れた紀行文集で、その次に読んだのがタイトルにもある通り、彼がスコットランドのアイラ島という場所を訪ねた『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』である。このエッセイに、あっさりと射抜かれてしまったわけなのです。

 

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

 

 

ウィスキーの聖地、アイラ島

とはいえ、このアイラ島ですが、知る人ぞ知る地名ではある。それはなぜかというと、このアイラ島はウィスキーの製造でとってもとても有名だからです。僕はお酒が割りと好きな方なので実際に飲むこともありますが、お店とかで出している「ボウモア」とか「ラガヴーリン」とか「カリラ」といったシングルモルトウィスキーの原産地はまさしくここ、アイラ島なのです。とはいえ、アイラ島が、世界各国の観光客が足しげく訪れる観光地なのかというとそうではないらしい。村上春樹いわく、観光名所と呼べるところは一つもなく、夏の数ヶ月間を除けば、冬場は風が強く、雨もよく降るそう。「そんなところになぜ村上春樹が?」と思うかもしれないが、まさしくアイラ島はシングルモルトウィスキーの聖地であり、村上氏自身「ウィスキーの聖地巡礼」、「pilgrimage」のために彼の地を訪れたのだそうです。

 

アイラ島には2016年時点で合計8つのシングルモルトウィスキーの蒸溜所があり(本書が出版されたときは計7つ)、それぞれの蒸留所で作られたウィスキーを街のレストランで飲んだり、実際に蒸溜所を訪ねてウィスキー職人と交流した話が村上春樹によって綴られている。ちなみにアイラ島では牡蠣がとれるらしく、しかもその生牡蠣に島で作ったウィスキーをトクトクとかけて食べるそうですよ。最高ですよね、きっと。

 

◆◆◆

そして、聖地であるアイラ島を聖地たらしめているのは蒸溜所で作られるウィスキーであり、その職人たちの存在である。彼らはアイラ島で生まれ、育ち、ウィスキー職人として働き、ウィスキー職人としてその人生に幕を下ろす。村上春樹もいうようにこの島の蒸溜所こそが彼らの人生であり、宇宙なのである。そう言われると、彼らの人生は非常に興味深い。ウィスキー職人としての一生では、いったいどのような景色が見れるのか、どんな色で目の前のウィスキーが、世界が映っているのだろうか。多分それは僕たちには共有できないことなのだろうけど、実際にアイラ島にいってみれば、もしかしたら何かを感じ取れるのではないかと思っている。それこそが「聖地巡礼」の醍醐味であり、可能性なのだと。

あとは、個人的にウィスキーが好きなので、四六時中ウィスキーを飲みながら本読んでダラダラしたいですね。それともちろん、金色のウィスキーに満たされた牡蠣も食べたい。とってもとっても贅沢です。

 

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余談ですが、このアイラ島に村上氏はその奥様と一緒に回っていたらしく、本のエッセイのところどころに奥様が撮った写真が差し込まれている。この写真たちがまた旅情をそそるわけですが、その中に一枚とっても気になる風体をした牛がいます。あとあと調べてみると「ハイランドカウ」というらしく、なんとも可愛らしくダンディです。この牛にもいつか出会ってみたいなぁ。

聖地巡礼には、やっぱり途方もない魅力が詰まっている予感がしてならない。

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噂のハイランドカウ。Googleより画像転載。

 

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